第3のリハ
あとのひと月。
いつかは来ると思っていた息子の晴れ舞台。
タキシードを着こなす凛々しい背中を目にしながら
幼子の頃を思い出した。
あの小さかった背中が、
こんなにもたくましく育ったことに込み上げるものがある。
いつの間にか過ぎ去った年月。
息子の後ろ姿を横目に、
ふと鏡に自身の姿が映った。
お宮参りで小さな体を抱いて歩いた境内。
前を歩いていた母の背中にそっくりだった。
「お母さんも老けたな」 と感じたあの背中に。
凛々しい新郎に相応しい
母親でありたいと願うと同時に、
「いつまでも元気で」と言った息子の言葉を思い出した。
そんな思いに応えるために、
どうやって一歩を踏み出そうかと
思案し出した時、
栞に書かれている『to be 』の文字が目に入った。
思わず『ツゥビー』と呟いた。
ハービーハンコックの奏でる
ピアノの音色で満ち溢れてきた。
栞のQRコードをスマホにかざした。
『to be 』と名付けた由来が書いてあった。
パーフェクトデイズの平山が、
幸田文の『木』に見せられたように、
由来が腹にストンと落ちた。
気持ちの安泰に牽かれて通い出した。
そこは、